第4弾コラム|任せたいのに、任せられない。——権限委譲に失敗し続けた私が、やっと気づいたこと 「全部自分でやった方が早い」の先に待っていたもの

    この記事を読んでほしい人

    • 部下に任せたいが、うまくいかずに結局自分でやってしまう経営者
    • 任せたら失敗した経験があり、それ以来、関与が増えてしまっている経営者
    • 「自分がいないと回らない組織」から抜け出したい経営者

    「任せたいのに、任せられない」

    この悩みを抱える経営者は、本当に多い。

    優秀な人材が採れない時代、今いるメンバーに任せて動いてもらうしかない

    ——頭ではわかっている。

    でも、任せた途端に不安になる。報告が来ない。思っていた方向と違う。

    気づいたときには手遅れになっている。

    そうした経験が一度でもあると、人は「次は自分が管理しよう」と反対方向に振れてしまう。

    そして気づけば、部下が何も自分で判断しない組織ができあがっている。

    私自身が、まさにそのループを経験してきた一人です。


    「わかってくれているだろう」という思い込み

    経営者になりたての頃、私には「できる」と信頼していた部下がいました。

    仕事の勘がよく、動きも速い。私と似た感覚を持っていると思っていた。

    だから、大きな仕事を任せました。

    「あの人なら大丈夫だ」

    ——そう思い込んで、細かいことは何も確認しなかった。

    目的も、優先順位も、どんなペースで進めてほしいかも、困ったときにどう相談してほしいかも。

    しばらくして、うまくいっていないことがわかった。

    でも、そのときにはもう手遅れでした。

    後になって、彼はこう言っていました。「放置されていると感じていた」と。

    私は「信頼して任せた」つもりでした。でも彼にとっては「放り出された」と映っていた。

    同じ出来事が、まったく逆に見えていたのです。

    最初にきちんと確認すべきだった。目的、背景、優先順位、納期、期待値、報告・相談の仕方

    ——そういったことを、言葉にして共有するべきだった。「わかってくれているだろう」は、思い込みに過ぎなかった。


    失敗の後、私は反対方向に振れた

    この経験の後、私は「次は管理しよう」と思いました。

    進捗を細かく確認する。判断を自分が下す。問題が起きる前に手を打つ。

    一見、真剣に向き合っているように見えます。

    でも実態は——マイクロマネジメントでした。

    その結果、私はどんどん忙しくなっていきました。

    そして部下は、何かあるたびに私にお伺いを立てるようになっていきました。

    「自分で判断してはいけない」と、無言のうちに思わせてしまっていたのです。

    個人が育たない。組織が育たない。社長がいないと何も動かない。

    「任せる」から「管理しすぎる」に振れただけで、本質的には何も変わっていませんでした。


    振り子を止めた「仕組みと在り方の共有」

    試行錯誤の末に、私がたどり着いたのは「任せる前の設計」という考え方でした。

    うまくいっていないとわかってからでは遅い。だから、始まる前に一緒に考える。

    具体的には、こういったことを事前に丁寧に確認するようにしました。

    • 目的と背景: なぜこの仕事をするのか、何のためにやるのか
    • 優先順位: 何を一番大切にするか、何を後回しにしていいか
    • 納期と期待値: いつまでに、どのレベルで仕上げてほしいか
    • ボトルネックの想定: どこで詰まりそうか、そのときどう動くか
    • 報告・相談のタイミング: どんな状態になったら声をかけてほしいか

    そしてKPIを設定し、予定通りに進んでいなければ早めに一緒に対策を練る。

    詰まりそうな箇所を事前に洗い出し、乗り越え方の見通しを立ててから動いてもらう。

    でも、これだけでは足りませんでした。

    仕組みと同じくらい、もしくはそれ以上に重要だったのが

    ——取り組むスタンス、在り方・考え方の共有でした。

    「どうやればいいか」だけ伝えても、人は自分で考えなくなる。

    「なぜそう考えるか」「どういう判断軸で動いてほしいか」を伝えることで、初めて部下は自分の頭で考えるようになる。

    やり方ではなく、在り方を共有する。

    それが、部下が自立自走していくための、本当の土台でした。


    「任せる」とは、手放すことではない

    よく「任せる=放任」と誤解されます。でも私が経験から学んだことは、まったく逆です。

    任せるとは、丁寧に準備してから、あとは信じて見守ること。

    最初に時間をかけて、目的・背景・期待値・判断軸を共有する。ボトルネックを一緒に考える。

    報告・相談の仕方を決める。

    そこまでやって初めて、「あとは任せる」が機能する。

    逆に言えば、この準備なしに「任せた」のは、任せたのではなく「投げた」だけ。

    私の最初の失敗は、まさにそこでした。

    部下を自立自走させたいなら、その前段階で経営者がどれだけ丁寧に関われるか。

    そこが問われているのだと、今は思っています。


    最後に、一つ問いかけを

    あなたの組織では、今——

    部下に「任せる」前に、何を伝えていますか?

    目的だけ?それとも何も言わずにやらせている?あるいは、細かく管理しすぎて、部下が自分で判断するのをやめてしまっていませんか?

    「任せ方」を変えるだけで、組織は変わります。

    でも、自分の「任せ方の癖」を一人で気づくのは、意外と難しい。

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    著者プロフィール

    河村直人|組織開発・エグゼクティブコーチ

    経営者として自ら組織の壁にぶつかり、試行錯誤を重ねてきた経験をベースに、現在は経営者の思考整理と組織づくりの支援を行っている。「答えを教えるのではなく、経営者が自分で答えを出せるようになる」伴走スタイルが特徴。

    shinlifework.jp

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