50代後半・60代から小さく起業するなら、最初に考えたいこと

コラム連動|50代後半からの働き方再設計室・第3回
「何を売るか」より、「誰の何に役立てるか」
起業する。
心に決めている方もいらっしゃると思います。
起業と言っても、その形態は様々です。
独りでやる。
資金を用意して、会社を立ち上げ、事務所を借り、人も雇う。
どんなイメージをお持ちでしょうか。
世間体を気にしないのであれば、50代後半以降の起業は、大きく始める必要はありません。
むしろ私は、
人生後半の起業ほど、小さく始めたほうがいい
と考えています。
そして、最初に考えるべきことは、「何を売るか」ではありません。
誰の、どんな困りごとに、
自分の経験が役に立つのか。
まず、そこから考えることが大切です。
私は、起業を安易には勧めません
私はこれまで、二度起業し、二度つまずきました。
一度目は40代でした。世の中に追い風が吹いている分野を見つけ、「これは波に乗れる」と思って始めました。強みがあったわけでも、経験があったわけでもありません。
店舗を構えました。形は立派でした。
でも、固定費は毎月かかります。集客は思うようにいきません。その資金を確保するために、私は私で別の仕事をしていました。現場は、一緒に始めた仲間に任せきりでした。
二年足らずで、閉じました。
二度目は50代です。今度こそはと、信頼できる仲間と始めました。経営経験のある人間も、幹部だった人間もいました。ビジョンを掲げ、さあやるぞ、と臨みました。
しかし、実際に動いていたのは、ほとんど私一人でした。
なぜ動いてくれないのかと、夜中にひとりで考えていました。
答えは単純でした。動く設計をしていなかったのは、私です。「これだけの仲間がいれば、何とかなるだろう」——その甘さが、自分の中にありました。
だから私は、50代後半・60代の方に、勢いだけで起業することを勧めません。
会社を辞めれば、本気になれる。
大きなお金をかければ、後には引けなくなる。
立派なホームページをつくれば、お客様が来る。
残念ながら、それほど単純ではありません。
私自身の失敗から学んだのは、起業では「何をするか」以上に、始める順番が大切だということです。
起業の種は、「自然に相談されてきたこと」の中にある
50代後半・60代まで働いてきた方には、必ず積み重ねてきたものがあります。
- 仕事で乗り越えてきたこと
- 人に教えてきたこと
- トラブルを収めてきた経験
- 組織の中で調整してきたこと
- お客様との信頼関係を築いてきたこと
- 失敗から学んだこと
ご本人にとっては、
「そんなことは、誰でもやっている」
「特別なことではない」
と感じるかもしれません。
でも、その「当たり前」が、誰かにとっては、なかなか身につけられない知恵であることがあります。
例えば、長年営業をしてきた方なら、商品知識だけでなく、お客様との距離の取り方や、断られた後の関係のつくり方を知っています。
管理職をしてきた方なら、部下への指示の出し方だけでなく、人間関係がこじれた時の収め方を知っています。
現場で働いてきた方なら、マニュアルには書かれていない判断の基準や、失敗を防ぐ勘所を持っています。
そうした経験は、誰かの不安を軽くしたり、遠回りを減らしたりする力になります。
では、どうやってその種を見つけるか。
立派な事業計画は要りません。まずは、これまでを振り返ってみてください。
人から、よく聞かれてきたことは何でしょうか。
なぜか、自分に頼まれることは何でしょうか。
困っている人を見ると、つい助言してしまうことは何でしょうか。
周囲から、
「話を聞いてもらって助かりました」
「教えてもらったおかげで、うまくいきました」
「あなたが間に入ってくれてよかった」
と言われたことはないでしょうか。
そこに、小さな起業の種があります。
自分がやりたいことだけでなく、人から求められてきたことを見る。
これが、とても大切です。
ただし、経験があるだけでは仕事にならない
ここは、少し厳しくお伝えしたいところです。
長い経験があることと、その経験が仕事になることは、同じではありません。
「私はこんな経験をしてきました」
と伝えるだけでは、相手にとっての価値は分かりません。
必要なのは、自分の経験を、相手の困りごとにつなげて考えることです。
例えば、
「管理職を20年経験しました」
で終わるのではなく、
「初めて部下を持った管理職が、部下との関係づくりに悩んだ時に、具体的な相談に乗れる」
という形に変えてみる。
「長年、経理を担当してきました」
で終わるのではなく、
「小さな会社の経営者が、毎月のお金の流れを把握できるように支援する」
という形に変えてみる。
経験そのものを売るのではありません。
経験によって、
誰のどんな問題を軽くできるのか。
そこまで考えて初めて、仕事の形が見えてきます。
「小さく試す」とは、具体的に何をすることか
小さく始めると言っても、何をすればよいか分からない方もいるでしょう。
最初は、次の順番で十分です。
1まず、一人の話を聞く
自分の経験が役立ちそうな人に、今どんなことに困っているのかを聞いてみます。
こちらから答えを押しつけず、相手の困りごとを知ることから始めます。
2一つの困りごとに絞る
何でも相談に乗ろうとすると、かえって何ができる人なのか伝わりません。
まずは、一つの相手、一つの困りごとに絞ります。
3一度、実際に支援してみる
相談、助言、勉強会、資料作成、同行支援など、小さな形で実際に役立てるか試します。
終わったら、「何が一番役に立ちましたか」「もっと聞きたかったことはありますか」と感想を聞いてみます。
4次は、小さく有料で試してみる
最初は無料でも構いません。
ただし、いつまでも無料で続けるのではなく、次は小さな料金を設定してみます。
お金を払ってでもお願いしたいと思ってもらえるか。そこで初めて、自分の経験が仕事として成立する可能性を確かめられます。
反応がなければ、失敗ではありません。相手や内容、伝え方を見直せばよいのです。
大きな投資をする前に、小さく確かめる。
これが、人生後半の起業における大切なリスク管理です。
お金については、始める前に線を引いておく
精神論だけでは、生活は守れません。現実的な話もしておきます。
私が申し上げているのは、次の三つです。
守りの線を引いておくほど、思い切って試すことができます。
「続けられるか」も、同時に考える
起業の可能性だけでなく、無理なく続けられるかどうかも大切です。
- 毎月、どの程度の収入が必要なのか
- 仕事に、どれくらいの時間を使えるのか
- 健康や体力に無理はないか
- 家族との時間をどうしたいのか
人生後半の起業では、売上を大きくすることだけが成功ではありません。
週に数日だけ働く。
一か月に数人だけ支援する。
今の仕事を続けながら、副業として始める。
顧問やメンターとして、一社、一人と長く関わる。
そういう形でもいいのです。
若い頃と同じように、無理をして走り続ける必要はありません。
自分が無理なく続けられ、
相手にも喜んでもらえる形をつくる。
それが、人生後半の小さな起業です。
お金だけではない、人生後半の起業の意味
もちろん、収入は大切です。
生活がありますから、現実を無視してはいけません。
でも、人生後半の起業には、収入以外の意味もあります。
自分の経験を、もう一度社会につなげること。
誰かの不安を軽くすること。
若い人の挑戦を支えること。
同じ悩みを持つ人に、道筋を示すこと。
自分が遠回りして学んだことを、次の人の力に変えること。
そこに、人生後半の起業の面白さがあると、私は思っています。
起業しないという結論でもいい
ここまで起業についてお話ししてきましたが、起業がすべての人に向いているわけではありません。
考えてみた結果、
- 転職のほうが自分には合っている
- 再就職で無理なく働きたい
- 顧問やメンターとして人を支えたい
- 今の会社に残りながら、少しずつ準備したい
そういう結論になることもあります。
それでいいのです。
転職、再就職、小さな起業、顧問・メンター。
どの選択肢が上で、どれが下ということはありません。
大切なのは、誰かの成功例に自分を合わせることではなく、自分の経験や暮らし方に合う道を見つけることです。
起業するかどうかを、今すぐ決める必要はありません。
まずは、
「自分の経験は、
誰のどんな困りごとに役立つのだろう」
と考えてみてください。
そして、必要としている人を一人見つけ、その一人に誠実に役立ってみる。
そこから、人生後半の新しい仕事は、静かに育ち始めます。
まずは、自分がどの方向に近いかを整理してみませんか
50代後半からの働き方には、転職・再就職・小さな起業・顧問・メンターなど、複数の選択肢があります。
最初から、一つに決める必要はありません。
とはいえ、ひとりで考えていると、同じところをぐるぐる回ってしまうものです。そんな時のために、二つの入口をご用意しています。
① まずは気軽に、方向を確かめたい方へ
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考えがまとまっていなくても大丈夫です。何を書けばいいか迷ったら、
「人生後半の働き方を整理したいです」
その一言だけで構いません。そこから、一緒に考えていきます。
どちらから始めても構いません。診断を受けてから相談に進む方も、最初から相談に申し込む方も、どちらも歓迎です。
今日も明るく元気よく。
河村直人
株式会社シンライフワーク 代表


