第8弾コラム|「OK?わかる?」と確認していたのに、なぜ社員には伝わっていなかったのか。

    会議の中で、私は何度も確認していました。

    「OK?」
    「わかる?」
    「ここまで大丈夫?」

    社員はうなずく。
    「はい」と返事をする。

    だから私は、伝わっていると思っていました。

    しかし、現実には行動が変わらない。
    決めたことが進まない。
    こちらが思っているほど、現場は動いていない。

    その理由を、私は長い間、社員の理解力や主体性の問題だと思っていました。

    ある出来事をきっかけに、自分の思い込みに気づかされました。

    目次

    信頼していた幹部から聞いた、社員の本音

    ある時、信頼していた幹部から、こんなことを言われました。

    「河村さんが話をして、出かけたあと、残った社員がこう言っていますよ。
    『言っていることが、よくわからないですね』
    『言いたいことだけ言って終わりですよね、いつも』と」

    その言葉を聞いた時、私は愕然としました。

    私は、社員に向けて一生懸命に話しているつもりでした。会社の方向性を示しているつもりでした。今、何が必要なのかを伝えているつもりでした。

    その時の私は、こう思ってしまいました。

    「そうであれば、カバーしてほしい」
    「社員が理解できるように、自分なりの言葉で説明してほしい」

    今振り返ると、その受け止め方にも、私の未熟さがありました。

    本当に見るべきだったのは、幹部がカバーしてくれなかったことではありませんでした。

    見るべきだったのは、なぜ私の言葉が、社員の心に届いていなかったのか——ということでした。

    「OK?わかる?」は、確認になっていなかった

    当時の私は、会議の中でポイントごとに確認していました。

    「OK?」
    「わかる?」
    「ここまで大丈夫?」

    社員は、その場ではうなずいていました。「はい」と言っていました。

    しかし…行動には現れていなかった。

    言葉は理解していた。
    でも、なぜそれをやるのかまでは腹に落ちていない。
    その行動が何につながるのかも見えていない。
    自分がなぜ動く必要があるのか、心が動くところまで届いていない。

    私は、言葉を届けたつもりでしたが、心を動かすところまでは届けられていなかった。

    「OK?」と聞くことは、確認ではありません。

    本当の確認とは、相手の口から、相手の言葉で語ってもらうことです。

    「どう理解したのか」
    「何が大事だと思ったのか」
    「どこに違和感があるのか」
    「自分は何から動くのか」

    そこまで聞いて初めて、伝わったかどうかがわかる。

    私は、確認していたのではなく、確認した気になっていただけだったのです。

    「わかりました」は、納得とは限らない

    経営者は、つい急いでしまいます。

    伝えたいことがある。決めなければならないことがある。次に進めなければならないことがある。

    だから、会議の中で説明し、確認し、相手がうなずくと、次に進みたくなります。

    ここに落とし穴があります。

    「わかりました」は、必ずしも納得ではありません。

    その場の空気を壊さないための返事かもしれない。
    社長の話を止めないための返事かもしれない。
    本当はよくわかっていないけれど、聞き返しにくくて出た返事かもしれない。

    特に、社長と社員の間には、立場の差があります。社長が思っている以上に、社員は社長の顔色を見ています。

    今、言っていいのか。
    ここで質問してもいいのか。
    反対意見を出しても大丈夫なのか。

    そうしたことを、一瞬で感じ取っています。

    「OK?」と聞いて返ってくる「はい」は、理解の証明ではありません。それは、その場を終わらせるための返事であることもあります。

    社員が本音を言わない組織では、何が起きるのか

    社員が本音を言わない組織では、表面上は静かに見えます。

    会議で大きな反対は出ない。社員はうなずく。「わかりました」と言う。その場は、問題なく終わる。

    とはいえ、静かな組織が、必ずしも良い組織とは限りません。

    本音が出ない組織では、問題が水面下に沈んでいきます。

    小さな違和感が共有されない。
    現場の不安が上がってこない。
    社員が何につまずいているのか、社長には届かない。

    そして、問題が大きくなってから表面化します。

    「実は、前から無理だと思っていました」
    「本当は、あの時点で違和感がありました」
    「でも、言えませんでした」

    その言葉を聞いた時、社長は思います。「なぜ、もっと早く言ってくれなかったんだ」

    私も、そう思ったことがあります。

    しかし、今は、少し違う見方をしています。

    社員が言わなかったのではなく、社員が言いにくい空気を、私がつくっていたのかもしれない。

    沈黙は、同意とは限りません。沈黙は、あきらめであることもあります。

    本音を引き出すために必要な3つの問い

    では、どうすれば社員や幹部の本音を引き出せるのでしょうか。

    私は、特別なテクニックよりも、まず社長側の問いの質を変えることが大切だと思っています。

    1. 「今の話を、あなたの言葉で言うとどうなる?」

    これは、理解を確認する問いです。

    社長の言葉をそのまま復唱してもらうのではありません。社員や幹部自身の言葉で、どう理解したのかを聞くのです。

    同じ話を聞いていても、人によって受け取り方は違います。社長が伝えたかったことと、社員が受け取ったことがズレていることはよくあります。

    そのズレは、相手の言葉を聞かないとわかりません。

    「今の話を、あなたの言葉で言うとどうなる?」と聞いてみる。すると、伝わっている部分と、伝わっていない部分が見えてきます。

    2. 「この話で、引っかかるところはどこ?」

    これは、本音を出しやすくする問いです。

    「反対意見はある?」と聞くと、社員は少し身構えます。

    それを「引っかかるところはどこ?」と聞かれると、少し言いやすくなります。

    反対ではなく、違和感。否定ではなく、確認。抵抗ではなく、情報。

    そういう扱いになるからです。

    経営者にとって、社員の違和感は邪魔なものではありません。むしろ、現場を動かすための大切な情報です。小さな違和感を早い段階で聞ける組織は、大きな問題を防ぐことができます。

    3. 「明日から動くとしたら、最初の一歩は何?」

    これは、行動につなげる問いです。

    話を聞いて、理解した。方向性もわかった。でも、最初の一歩が曖昧なままだと、人は動きません。

    「明日から動くとしたら、最初の一歩は何?」——この問いを投げると、社員や幹部は自分の行動として考え始めます。

    ここまで言葉になって初めて、会議の内容は現場に降りていきます。

    会議で大切なのは、社長が話し切ることではありません。社員や幹部が、自分の言葉で理解し、自分の行動として語れる状態をつくることです。

    組織を変える第一歩は、「伝えたつもり」を疑うこと

    社長の言葉には力があります。それは、良い意味でも、怖い意味でもです。

    社長が少し強く言えば、社員は黙ります。
    社長が急いでいれば、社員は質問を控えます。
    社長が結論を急げば、社員は本音を飲み込みます。

    社長本人にそのつもりがなくても、社員は敏感に感じ取ります。

    私自身、何度も失敗してきました。

    伝えたつもりになったこと。確認したつもりになったこと。相手の沈黙を、理解や納得だと思い込んだこと。社員が動かない原因を、自分以外のところに探していたこと。

    その一つひとつが、組織の中に見えない壁をつくっていたのだと思います。

    組織を変えるために、特別なことから始める必要はありません。

    「OK?」ではなく、「どう受け取った?」と聞いてみる。
    「わかる?」ではなく、「どこが引っかかる?」と聞いてみる。
    「大丈夫?」ではなく、「最初の一歩は何にする?」と聞いてみる。

    その小さな違いが、組織の沈黙をほどいていきます。

    最後に

    もし今、あなたの会社で、会議ではうなずくのに現場が動かないと感じているなら——

    社員が理解していないのではなく、社員が理解できる形で伝えられていないのかもしれません。

    社員に主体性がないのではなく、主体的に動く理由が、まだ心に届いていないのかもしれません。

    本音を言わない社員が悪いのではなく、本音を言いにくい空気が、いつの間にか組織に生まれているのかもしれません。

    気づいたところから、組織は変えられます。


    組織の「伝わっていない」を、一緒に整理しませんか

    会議では確認している。社員も「はい」と言っている。それなのに、現場では動かない。

    その背景には、社員の能力や意識だけではなく、社長の伝え方、幹部との関係性、会議の空気、これまで積み重なってきた組織の習慣が関係していることがあります。

    私・河村直人との個別セッションでは、あなたの会社で今起きている「伝わっていない理由」を一緒に整理します。無理に答えを押しつけることはしません。まずは、今起きていることを丁寧に言葉にするところから始めます。

    • 形式:オンライン(Zoom等)または対面
    • 時間:60分(一回完結)
    • 費用:30,000円(税込)

    社員が本音を言わない原因を、社員のせいにする前に。一度、社長自身の言葉と、組織の受け取り方を見直してみませんか。

    個別相談のお申し込みはこちら


    関連記事:
    幹部・右腕が育たない経営者が、見落としていること
    社員が育たない本当の理由


    著者:河村直人
    組織開発・エグゼクティブコーチ。自ら経営危機を経験し、師との対話によって再起した原体験を持つ。「答えを教えるのではなく、経営者が自分で答えを出せるようになる」伴走スタイルが特徴。現在は経営者の思考整理と組織づくりの支援を行っている。
    shinlifework.jp

    お気軽にご相談ください。

    ※ 無理な提案や営業は一切いたしません。

    • URLをコピーしました!
    目次