第9弾コラム|「自分で考えろ」と言いながら、答えを先に出していた私 —— 社員の主体性を奪っていた、社長の関わり方

この記事を読んでほしい人
- 社員に「もっと自分で考えろ」と言っても、変わらないと感じている経営者
- 幹部が育たない、いつも指示待ちだと悩んでいる経営者
- 任せたいのに、任せられずに自分だけが動いている経営者
- 組織に主体性が生まれない原因が、どこにあるかわからない経営者
社員に、もっと自分で考えてほしい。
幹部に、自分で判断して動いてほしい。
いちいち確認しなくても、前に進めてほしい。
経営者なら、一度はそう思ったことがあるのではないでしょうか。
私も、ずっとそう思っていました。
「なぜ、自分で考えないのか」
「なぜ、すぐ聞きに来るのか」
「なぜ、言われないと動かないのか」
そう感じるたびに、いらいらしていました。
そうした態度を社員にも見せていたに違いありません。
でも、今振り返ると、社員は決して考えていなかったわけではなかったと思います。
私が、社員が考える前に、答えを出していた……
社員の話を、私は最後まで聞いていなかった……
社員の話を、私は最後まで聞いていなかった
当時の私は、社員が相談に来ても、話半分で聞いていました。
社員が話し始める。
私は途中で要件をつかんだつもりになる。
そして、すぐに言っていました。
「で、どうするの?結論から言って!」
「それはこうだろう!」
「すぐ行動しないとダメだろう!」
本人が何を考えているのか。
どこで迷っているのか。
本人なりに、どうしようとしているのか。
そこを聞く前に、私が答えを出していました。
もちろん、その時の私は、会社のために必要なことをしているつもりでした。
判断を早くすること。問題をすぐ解決すること。社員を迷わせないこと。
それがトップの役割だと思っていました。
しかし実際には、まったく逆方向の関わり方をしていました。
私は、社員に考えさせていたのではありません。
自分の考えに合わせろ、と言っていただけだったのです。
社員から見えていた景色
私はよく、社員に「主体的にやれ」「もっと考えろ」と言っていました。
しかし、社員からすれば、こんな感じだったはずです。
相談に行く。
話を最後まで聞いてもらえない。
途中で遮られる。
社長の答えが出る。
その通りに動けと言われる。
それなのに、また別の場面では「もっと自分で考えろ」と言われる。
これは、部下からすれば、たまったものではありません。
きっと、心の中ではこう思っていたに違いありません。
「いや、考える前に社長が決めるじゃないか」
「自分の意見を聞く気なんてない」
「結局、社長の正解に合わせるだけ」
本当に、その通りだったと思います。
私は、社員に主体性を求めながら、社員が主体的に考える余白を、自分で奪っていました。
指示待ちは、社員が学習した結果だった
当時の私は、社員が動かないことに苛立っていました。
でも本当は、社員が自分で動きにくい構造を、私がつくっていたのです。
相談に来たら、私が答える。
迷っていたら、私が判断する。
提案してきたら、私が修正する。
動きが遅ければ、私が先に動く。
そうすると、社員は学習します。
「考えるより、社長に聞いた方が早い」
「自分で判断するより、社長の答えを待った方が安全だ」
「どうせ最後は、社長が決める」
こうして、組織は少しずつ指示待ちになります。
でも、それを見た私は、さらに苛立つ。
「なぜ、指示待ちなんだ」
「なぜ、主体性がないんだ」
社員が考えないのではなく、社員が考え始める前に、私が答えを出していた。
そのことに、当時の私は気づいていませんでした。
人を育てるのではなく、コントロールしようとしていた
振り返ると、私は人を育てようとしていたのではなく、人をコントロールしようとしていたのだと思います。
自分の考え通りに動いてほしい。
自分のスピードに合わせてほしい。
自分の正解に近づいてほしい。
人は、思いどおりにはコントロールできません。
表面的には動かせるかもしれない。命令すれば、その場では動くかもしれない。
しかし、それでは当然ながら自立した人は育ちません。
本人の中に判断基準が育たないからです。
人をコントロールするのではなく、本当にコントロールすべきだったのは、自分自身でした。
すぐ答えを出したくなる自分。
最後まで聞かずに結論を言いたくなる自分。
失敗されるのが怖くて、先回りしてしまう自分。
そこをコントロールしなければいけなかった。
しかし、それができなかったのが、その当時の私です。
答えを出すことより、考えを引き出すこと
社長の仕事は、答えを出すこと。それは間違いではありません。
会社には、最後に誰かが決めなければいけない場面があります。スピードが求められる場面もあります。
しかし、すべての場面で社長が答えを出してしまうと、社員は考える必要がなくなってしまいます。
だから本当に必要だったのは、社員の考えを聴くことでした。
「あなたは、どう思う?」
「なぜ、そう考えたの?」
「他には、どんな選択肢がある?」
「まず何から試してみる?」
答えを与えるのではなく、考える入口をつくる。
これが、人を育てる関わり方だったのだと思います。
そして難しかったのは、黙ることでした。
社員の話を聞いていると、すぐに答えが浮かぶ。
違うと思うと、すぐに修正したくなる。
でも、社長がすぐ口を出すと、社員はそこで考えるのをやめます。
社員に考えてほしいなら、まず社長が待つ必要があります。
沈黙を待つ。迷いを待つ。未完成の意見を待つ。
少し危なっかしい提案も、まず聞いてみる。
余白をつくってあげることが大事だった……
これが大事だったのです。
今、あの頃の自分に言うなら
もし、当時の自分に一言だけ言えるなら、こう言いたいです。
「まず、最後まで聴け」
「社員の話を、途中で遮るな」
「要件だけを急ぐな」
「持論を押しつけるな」
「相手が何を見ているのか」
「何に迷っているのか」
「どう考えているのか」
まず、そこを聴け。
そのうえで、必要なら導けばいい。
最初から答えを奪うな。
人は、命令で動くことはあっても、命令だけでは育ちません。
育つのは、自分で考えた時です。自分で決めた時です。自分の言葉で仕事の意味をつかんだ時です。
その機会をつくるのが、経営者の役割なのだと思います。
社員の主体性は、経営者の関わり方で決まる
社員が考えない。
幹部が育たない。
現場が動かない。
いつも自分が動いている。
そして、いつもイライラしている。
もし、そう感じているなら、一度立ち止まってみる必要があります。
本当に社員が考えていないのか。
それとも、社員が考える前に、社長が答えを出していないか。
本当に幹部が育たないのか。
それとも、幹部が判断する機会を、社長が奪っていないか。
これは、耳の痛い問いです。
しかし、この問いから逃げなければ、組織は変わり始めます。
社員をコントロールするのではなく、まず自分自身の関わり方を見直す。
そこから、人が育つ組織は始まるのだと思います。
最後に
私は、社員に「もっと考えろ」と言いながら、社員が考える前に答えを出していました。
社員に「主体的に動け」と言いながら、自分の考えに合わせることを求めていました。
社員に「成長してほしい」と思いながら、成長するための失敗や判断の機会を奪っていました。
その結果、いつも自分が動く。いつも自分が判断する。いつも自分が抱える。そして、いつもイライラする。
そういう組織を、自分でつくっていたのです。
人を育てるとは、相手を自分の思い通りに動かすことではありません。
相手が自分で考え、自分で判断し、自分の責任で一歩を踏み出せるようにすること。
そのために、経営者がまず自分を整えること。
そこからしか、本当の主体性は育たないのだと思います。
社員が考え、幹部が育ち、社長が一人で抱えない組織へ
社員が自分で考えない。
幹部が育たない。
いつも社長が判断し、社長が動いている。
任せたいのに、任せきれない。
その背景には、社員の能力や意識だけでなく、経営者自身の「関わり方の習慣」が影響していることがあります。
私・河村直人との個別相談では、あなたの会社で今起きている組織のボトルネックを、一緒に整理していきます。
答えを押しつけるのではなく、まずは今、何が起きているのかを言葉にする。
そこから、次の一手が見えてきます。
社員が自分で考え、幹部が動き、社長が本来の仕事に集中できる組織へ。
まずは一度、現在の状況をお聞かせください。
形式:オンライン(Zoom等)または対面 / 時間:60分(一回完結) / 費用:30,000円(税込)
著者:河村直人
組織開発・エグゼクティブコーチ。経営者として自ら組織の壁にぶつかり、試行錯誤を重ねてきた経験をベースに、現在は経営者の思考整理と組織づくりの支援を行っている。shinlifework.jp
関連記事
この記事を書いた人
河村直人|組織開発・エグゼクティブコーチ
5社の社長・1社の会長を歴任し、IPO、事業危機、起業失敗、組織再生を経験。自身の失敗と再起の経験をもとに、経営者の思考整理、幹部育成、組織づくりを支援している。答えを教えるのではなく、経営者自身の中にある答えを引き出す伴走スタイルを大切にしている。


