【第1回】「正しいこと」を言えば、人は動くと思っていた――33歳、最初の事業再生で知ったこと

    SERIES
    人と組織は、どうしたら動くのか。
    三度の立て直しの現場で、私が考えてきたこと
    EPISODE 01

    この記事を読んでいただきたい方

    • 社員や幹部が、思うように動いてくれないと感じている経営者
    • 方針や目標を伝えているのに、組織がなかなか前に進まない経営者
    • 自分ばかりが組織を背負っていると感じている経営者
    • 「人を動かす」とは何なのか、一度立ち止まって考えてみたい経営者

    「人が思うように動いてくれない」

    と感じることがあるという経営者は少なくありません。

    何度伝えても、なかなか伝わらない。

    幹部には、もっと自分ごととして考えてほしい。

    社員には、指示を待つのではなく、自ら考えて動いてほしい。

    方針を示し、目標を決めた。

    そして、戦略、やるべきことも伝えた。

    それなのに、なぜか組織が前に進まない…。

    私自身、これまで何度もそんな場面にぶつかってきました。

    そして今振り返ってみると、

    「人と組織は、どうしたら動くのか」

    という問いは、私の経営人生のかなり大きな部分を占めていたと思います。

    目次

    私自身のことを、少しだけ

    改めまして、河村直人と申します。

    社会人のスタートは、食品メーカーの営業でした。

    その後、人材ビジネスの世界へ移り、33歳で初めて会社の経営を任されました。

    それから、起業もしました。

    そして、失敗し、会社を閉じました。

    その後、運よく、再び企業の立て直しを任され、

    合併、M&A、組織統合、そして上場も経験しました。

    気がつけば、これまで5社の社長と1社の会長を務めてきました。

    順風満帆だったかと言われれば、まったくそんなことはありません。

    むしろ、

    「ジェットコースターのような人生ですね」

    と言われる方が、しっくりきます。

    特に経営という仕事では、三度、人と組織の立て直し・再構築に深く関わりました。

    最初は33歳。

    二度目は44歳。

    そして三度目は、M&A後に混乱していた会社の経営を引き受けたときです。

    もちろん、三つとも状況はまったく違いました。

    しかし、共通していたことがあります。

    それは、

    戦略や制度をつくっただけでは、人は動かない

    ということでした。

    なぜ、今この話を書くのか

    私は今、60代(62歳)になりました。

    現在は、自ら会社を経営する一方で、経営者の支援やエグゼクティブコーチ、社外取締役などの仕事をしています。

    経営者の話を聴きながら、一緒に考える仕事です。

    最近、自分自身に一つの問いを持つようになりました。

    10年後、私は何を残していたいのだろう。

    会社なのか。

    肩書なのか。

    実績・成果なのか。

    もちろん、どれも意味のあるものだと思います。

    ただ、今の私が残したいと思っているのは、それだけではありません。

    これまでの人生で経験したこと。

    うまくいったこと。

    うまくいかなかったこと。

    自分の判断が正しいと思って進んだのに、人がついてこなかったこと。

    良かれと思って厳しく接したことが、相手にとっては苦しかったかもしれないこと。

    逆に、もうダメかもしれないと思ったときに、社員や仲間に支えてもらったこと。

    そうした経験の中から少しずつ学んできた、

    「人と組織が動くとは、どういうことなのか」

    を、次の世代の経営者に残していきたいと思うようになりました。

    だから、このコラムを書いてみようと思いました。

    成功談だけを書くつもりはありません。

    むしろ、

    「あのとき、もっとこうすればよかった」

    という話も書きたい。

    今だから分かることも書きたい。

    私自身が経営者として迷い、悩み、時には間違えながら経験してきたことを、

    一つずつ振り返ってみたいと思っています。

    33歳。突然、経営を任された

    最初の経験は、33歳のときでした。

    当時私は、人材ビジネス会社で働いていました。

    ある日突然、ジョイントベンチャー企業へ行き、経営を担うよう命じられました。

    正直なところ、最初はお断りしました。

    まだ33歳です。

    経営者になるための準備をしていたわけでもありません。

    「会社を立て直す方法」など知るはずもありません。

    それでも、最終的には引き受けることになりました。

    行ってみると、その会社は大赤字でした。

    数字を何とかしなければならない。

    売上を上げなければならない。

    利益を出さなければならない。

    もちろん、それは経営者として当然です。

    でも、実際に会社の中へ入ってみると、数字だけを見ていても分からないことがたくさんありました。

    そこで働いている人がいる。

    それまで積み上げてきた仕事のやり方がある。

    人間関係がある。

    会社に対する思いがある。

    不安もある。

    そして、新しくやってきた33歳の私に対して、

    「この人に何ができるのだろう」

    と思っていた人も、当然いたはずです。

    今になれば、よく分かります。

    でも当時の私は、そこまで分かっていたかと言うと・・・。

    たぶん、分かっていなかったと思います。

    「正しいこと」を言えば、人は動くと思っていた

    若かったこともあります。

    責任も感じていました。

    何とか会社をよくしなければならない。

    その思いは強かった。

    だから、自分なりに考えて、

    「これをやろう」

    「ここを変えよう」

    「もっとこうした方がいい」

    と伝えていきました。

    間違ったことを言っていたつもりはありません。

    おそらく、経営として必要なことも多かったと思います。

    でも、今振り返ると、一つ大きな勘違いをしていました。

    それは、

    正しいことを言えば、人は動く。

    という思い込みです。

    正しいかどうか。

    合理的かどうか。

    会社にとって必要かどうか。

    もちろん大切です。

    しかし、人には感情があります。

    これまでやってきたことへの誇りがあります。

    「なぜ急に変えなければならないのか」という戸惑いもあります。

    そして何より、

    「誰から言われるか」

    によって、同じ言葉でも受け止め方が変わります。

    当時の私は、そこまで深く考えていなかったと思います。

    会社は、私一人では立て直せなかった

    結果として、その会社はV字回復することができました。

    でも、私は今でも、この経験を

    「自分が会社を立て直した」

    とは思っていません。

    社員がいました。

    一緒に動いてくれる人がいました。

    周囲の支援がありました。

    そして、時代の流れや運にも助けられました。

    以前から私は、

    「縁」と「運」の賜物だった

    と振り返っています。

    経営者になると、つい、

    「自分が決めた」

    「自分が変えた」

    「自分が成果を出した」

    と思ってしまうことがあります。

    でも会社というものは、そんなに単純ではありません。

    経営者一人では、売上をつくれません。

    経営者一人では、お客様を支えられません。

    経営者一人では、会社を変えることもできません。

    結局、人が動かなければ何も変わらない。

    33歳の私は、そのことを頭ではなく、現場で初めて知ったのだと思います。

    人を「動かす」という言葉への違和感

    だから、この連載のタイトルを考えながら、一つ気になっていることがあります。

    「人を動かす」

    という言葉です。

    経営者は、つい使います。

    私も使ってきました。

    でも、人は機械ではありません。

    ボタンを押したら動くものでもありません。

    命令したから動く。

    目標を与えたから動く。

    評価制度を変えたから動く。

    そんなに簡単なものではない。

    本当に強い組織は、

    「動かされた人」が集まった組織ではなく、「自ら動く人」が増えていく組織

    なのではないか。

    今の私は、そう考えています。

    では、どうしたら人は自ら動くのか?

    いや、動いてくれるのか?

    何があれば、経営者の思いは幹部へ伝わるのでしょうか。

    どうしたら、幹部から現場へ伝わるのでしょうか。

    そして、どうしたら経営者一人が背負わなくても、組織は前へ進んでいくのでしょうか。

    私にも、すべての会社に通用する正解があるとは思っていません。

    ただ、三度の立て直しと、その間に経験した数々の失敗を振り返ると、いくつか見えてきたことがあります。

    これから、このコラムで一つずつ書いていきたいと思います。

    次回は、33歳の私が初めて会社の立て直しを経験したとき、

    「数字を変える前に、何を見なければならなかったのか」

    について、もう少し具体的に振り返ってみます。

    あのときの私は、まだ「経営者とは何をする人なのか」さえ、十分には分かっていませんでした。

    だからこそ、今振り返ると見えてくるものがあります。

    この連載が、いま人や組織について悩んでいる経営者の方にとって、ご自身の会社を少し立ち止まって考える時間になれば嬉しく思います。

    次回は――

    「数字を変える前に、何を見なければならなかったのか」

    33歳で初めて会社の経営を任された私。
    目の前にあったのは、大きな赤字でした。

    当然、売上や利益をどうするかを考えます。
    しかし、実際に会社へ入ってみると、数字だけを見ていても会社は立て直せないことに気づいていきました。

    次回は、最初の事業再生で私が「数字の向こう側」に何を見たのかを、もう少し具体的に振り返ります。

    経営者の方へ

    人や組織の問題には、会社ごとに違う背景があります。

    「社員が動かない」
    「幹部に思いが伝わらない」
    「自分ばかりが背負っている」

    同じように見える悩みでも、その奥にある原因は一社一社違います。

    私は、経営者の話を聴きながら、一緒に状況を整理し、次の一歩を考える仕事をしています。

    もし今、一度誰かと整理してみたいと思われていることがあれば、お話をお聴かせください。

    「相談する・問い合わせする」

    お気軽にご相談ください。

    ※ 無理な提案や営業は一切いたしません。

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